大型構造物や設備の高精度な測定現場で活躍するレーザートラッカーですが、その運用において中心となるのがリフレクタ計測です。こちらでは、リフレクタ計測の具体的な仕組みから、メリット・デメリット、測定時に欠かせないリフレクタホルダーの種類や使い方までを詳しく解説します。
現場の測定業務を効率化したい方や、新たな三次元測定機の導入を検討している方は、ぜひご覧ください。
レーザートラッカーは、対象物に当てたリフレクタ(反射器)までの距離と、レーザー光の水平・垂直方向の角度を高精度に測定する機器です。リフレクタには、入射した光を正確に元の方向へ反射する特殊な光学素子が組み込まれています。
本体から照射したレーザー光がリフレクタに当たり、跳ね返ってくるまでの時間や位相差から距離を割り出します。さらに、本体の内部に搭載した角度センサーでレーザーの射出角度を読み取り、これらを組み合わせることで、リフレクタの中心位置をX・Y・Zの3次元座標として正確に算出する仕組みです。
作業者がリフレクタを手に持って移動させると、レーザートラッカーは反射光を検知し続け、自動でレーザーの方向を追尾します。これが「トラッキング」と呼ばれる機能です。リフレクタが動いている間もリアルタイムで照射方向を調整し、距離と角度の測定を連続的に行います。これにより、対象物の移動軌跡や変位を途切れることなく記録でき、スムーズな測定作業を実現します。
リフレクタを安定して保持し、より複雑な形状の測定を可能にするための補助治具が「リフレクタホルダー」です。リフレクタ単体(球体)でも平面の測定は可能ですが、ホルダーと組み合わせることで、穴の中心位置や角(エッジ)部分など、そのままでは測定が困難な箇所も正確に捉えられるようになります。
さまざまな測定対象に合わせて適切なホルダーを選ぶことで、レーザートラッカーの汎用性が格段に高まり、現場での作業効率や測定精度が向上します。
底面に強力な磁石を備え、鉄などの磁性体にしっかりと固定した上で測定を行えるタイプです。平面や円筒面にリフレクタを安定して設置したい場合の基本ツールであり、製造や組み立て現場で頻繁に使用されます。
ピン式ホルダーは、金型の基準穴や加工部品のボルト穴などに軸(ピン)を差し込んで使用するタイプです。穴の中心座標や深さを正確に割り出したい場面で不可欠なホルダーといえます。
エッジ用ホルダーは、部品の直角の角(エッジ)にぴったりとフィットするように設計したリフレクタホルダーです。製品の外形寸法の測定やコーナー部分を基準とした座標系を構築する際に重宝します。
最大のメリットは、半径数十メートルに及ぶ広範囲の空間を、わずか数十ミクロン単位の高い精度で測定できる点です。航空機や自動車、大型の工作機械など、従来の測定器ではカバーしきれないスケールの対象物でも、一度の設置で全体の3次元座標を取得できます。
操作性がシンプルである点も大きな強みです。測定の際は、基本的にリフレクタを対象物の測りたい箇所に接触させるだけでデータが取得できます。ノギスやマイクロメータのように作業者の力加減(測定圧)による誤差が生じにくいため、熟練度を問わず誰が測定しても安定した結果を得やすく、人的ミスの削減につながります。
リフレクタ計測は光の反射を利用するため、本体からリフレクタまでの間に障害物があり、レーザー光の通り道(見通し線)が遮られると測定ができません。そのため、入り組んだ構造の内部や死角となる裏面を計測する場合には、本体の設置場所を工夫したり、複数回の移動(位置替え)を行う必要があります。
対象物にリフレクタやホルダーを直接接触させて測定する性質上、柔らかくて変形しやすいゴム製品や絶対に傷をつけてはいけない鏡面仕上げの精密部品などの測定には不向きです。このような対象物を測る場合は、非接触のレーザースキャナーなどを併用できるモデルを検討する必要があります。
まず、レーザートラッカー本体を専用の堅牢な三脚スタンドに固定し、電源を入れます。起動を確認後、専用ソフトウェアを立ち上げ、気温や気圧、湿度などの環境データを入力して補正(環境補正)を行います。
次に、対象物の3D CADデータと、実際の測定物の向き・位置を合致させる「アライメント(座標系の構築)」を実施し、正確な測定を行うための基準を整えます。
測定したいポイント(平面、穴の中心、エッジなど)の形状に合わせたリフレクタホルダーを選定し、対象物にしっかりと固定します。ホルダーがガタつかないことを確認した上で、球状のリフレクタをホルダーのくぼみにセットします。
レーザートラッカーからレーザーを照射し、リフレクタの中心に当てます。機器がリフレクタを認識してトラッキング(自動追尾)がスタートしたことを確認したら、リモコンやパソコンを操作してそのポイントの座標データを記録します。その後はリフレクタを次の測定ポイントへ移動させ、同じ手順でデータの取得を繰り返していきます。
レーザートラッカーによるリフレクタ計測は、広範囲かつ高精度な3次元測定を実現する強力な手法です。属人的な測定誤差を減らし、大型設備の品質管理や組み立て業務を大幅に効率化できるメリットがある一方で、見通し線の確保が必要な点や接触測定である点には注意が必要です。自社の測定対象や現場環境に合っているかを把握した上で、適した機器選びを進めてください。
以下のページでは、レーザートラッカーと従来の三次元測定機との違いや導入費用の目安、主要メーカーの特徴についてさらに詳しく解説しています。導入検討時の比較材料としてあわせてご覧ください。
ここでは、卓上に乗らない大型サイズのワークを対象とした検査において、測定サイズごとに適した性能・特徴を持つ三次元測定機やレーザートラッカーと、そのメーカーについて紹介しています。
WMシリーズ
| 測定範囲 | 1.0~25.0m |
|---|---|
| 指示誤差 | ±(28 + 5L/1000) μm |
Quantum Max FaroArm
| 測定範囲 | 2.0~4.0m |
|---|---|
| 指示誤差 | ±25~76μm※ |
Absolute Tracker AT960
| 測定範囲 | ~80m(最大160m) |
|---|---|
| 指示誤差 | ±15μm +6μm/1m※ |