大型部品の三次元測定を成功させるには?

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大型部品の三次元測定は、一般的な測定とは異なり、移動や設置環境、測定範囲などの特有の課題に直面します。ワークの大きさゆえに段取りや精度確保が難しく、従来の手法では対応しきれないケースも少なくありません。

本記事では、大型測定における現場の課題を整理するとともに、目的に応じた測定スタイルと選定のポイントを分かりやすく解説します。

大型測定における3つの課題

移動

大型ワークの三次元測定においてまず、「移動」が大きな課題となります。数トンクラスの部品を検査室まで運搬するためには、クレーン設備や複数人での作業が必要となり、段取りだけでも多くの時間を消費します。さらに、搬送中には周囲設備との接触や振動による損傷リスクも伴い、安全面と品質面の両方に細心の注意が求められます。この負担が測定工程全体の効率低下につながる点も無視できません。

設置場所の環境

「設置場所の環境」も重要な課題です。金属材料は温度変化によって膨張・収縮するため、サイズが大きいほどわずかな温度差でも寸法に与える影響が増大します。空調管理が不十分な現場では温度のばらつきが生じやすく、その結果、測定値の再現性や信頼性が低下してしまいます。安定した測定のためには、環境条件の把握と適切な管理が不可欠です。

死角

「死角」の問題も避けて通れません。ワークが巨大かつ複雑な形状をしている場合、従来の測定手法では測定機のアームが物理的に届かない箇所や、レーザーが構造物に遮られてしまう領域が発生します。その結果、必要なデータが取得できない「測定不能箇所」が生じ、全体の精度評価に影響を及ぼします。このような死角を減らすことが、測定品質向上の重要なポイントとなります。

【目的別】大型三次元測定機

このような課題を解決するには、自社の測定環境や目的に適した「測定スタイル」の選択が欠かせません。ここでは、現場の条件に応じた代表的な3つのソリューションをご紹介します。

ガントリー型(定置式)

ガントリー型(定置式)は、高精度な門型構造を持つ大型の三次元測定機です。剛性の高いフレームにより、広い測定範囲と、ミクロン単位の極めて高い繰り返し精度を両立する構造です。航空機のエンジン部品や大型の精密金型、工作機械のベースなど、わずかな誤差も許されない最重要部品の検査に適しています。

一方で、本体が大規模なため専用の基礎工事や、厳密な温度管理が可能な恒温室の確保が必須となり、導入には中長期的な設備計画が求められます。

広域スキャナ・ハンディ型

広域スキャナ・ハンディ型は、測定機そのものをワークのある製造現場へ持ち運んで計測する装置です。大型ワークを検査室へ移動させる必要がなく、ラインサイドで即座に測定を開始できるため、段取り時間と搬送コストの大幅な削減につながります。操作も直感的で、属人化を防ぎやすい点が魅力です。

自動車のホワイトボディや建機フレーム、溶接治具のインライン・ニアライン検査などに適しています。近年は現場の温度変化に応じた環境補正機能が進化しており、実用精度が飛躍的に向上しています。

レーザートラッカー・空間座標計測

レーザートラッカーは、レーザーを照射し、反射鏡(ターゲット)を追跡することで三次元座標を高精度に取得するシステムです。数十メートルから、モデルによっては100メートルを超える広範囲の測定に優れており、巨大な構造物でも少人数で効率よく計測できます。

船舶のブロック寸法検査、風力発電ブレードの形状確認、大型プラント設備や航空機組立時のアライメント調整など、スケールの大きな対象に真価を発揮します。導入の際は、レーザーの光路を遮らない現場の動線確保が運用上のポイントとなります。

大型三次元測定機のチェックポイント

機種選定にあたっては、カタログスペック上の「精度」だけでなく、実運用を見据えた多角的な視点が重要です。まず、「有効測定範囲」の余裕をチェックしましょう。ワーク寸法に対してギリギリではなく、プローブ(接触子)の動作やスキャン時の取り回しに十分な余裕があることを確認してください。

また、現場測定を前提とする場合は、温度変化をリアルタイムで補正し、20℃換算値を正確に算出できる「温度補償機能」の性能が見極めのポイントです。さらに、設計CADデータの直接読み込みやヒートマップ表示による直感的な合否判定など、ソフトウェアの処理能力も業務効率を左右します。

そして、大型機特有の課題として、トラブル時に現地出張対応が可能な充実したメンテナンス体制をメーカーが提供していることも、安定稼働に直結する重要な評価要素となります。

まとめ

大型ワークの三次元測定では、「移動・環境・死角」といった特有の課題が存在します。これらに対応するためには、ガントリー型、ハンディ型、レーザートラッカーなど、用途や現場条件に応じた測定スタイルの選択が重要です。導入検討の際は、単なる測定精度の比較にとどまらず、段取り工数の削減効果、現場での環境適応力、操作性、保守体制などのトータルコスト(TCO)の観点から総合的に評価し、自社の生産体制に最も貢献するソリューションを見極めることが求められます。

以下のページでは、大型検査向けにおすすめの三次元測定機を紹介しています。比較検討の材料として、あわせてご活用ください。

キーエンス公式サイトへ
測定対象別
三次元測定機・
レーザートラッカー3選

ここでは、卓上に乗らない大型サイズのワークを対象とした検査において、測定サイズごとに適した性能・特徴を持つ三次元測定機やレーザートラッカーと、そのメーカーについて紹介しています。

自動車からプラントまで
現場での効率重視の検査なら
キーエンス

WMシリーズ

キーエンス公式HP
画像引用元:キーエンス公式HP(https://www.keyence.co.jp/products/3d-measure/cmm/wm/get-pricing/)
ワイヤレスプローブにより大型の測定もひとりで簡単に

取り回しの良いワイヤレス式で、接触式(プローブ)と非接触式(レーザー)の2種類が選択可能。寸法・形状を省人かつ効率的に測定できるハンディ型の測定機
手元に搭載されたタッチパネルによりその場でPCと通信でき、ひとりでもスピーディな測定を実現します。

測定範囲 1.0~25.0m
指示誤差 ±(28 + 5L/1000) μm
大型の金型など
複雑な形状の検査なら
FARO

Quantum Max FaroArm

FARO
画像引用元:FARO(https://www.faro.com/ja-JP/Products/Hardware/Quantum-FaroArms)
奥まった形状の測定でもアーム範囲内なら死角なし

手ぶれ・ミスの少なさから安定して操作でき、複雑な形状の対象物の測定で力を発揮する多関節アーム型の測定器
8軸テーブルを使用することで、一度のセットアップでさらに様々な角度からの測定が容易になります。

(※接触式測定の場合)
測定範囲 2.0~4.0m
指示誤差 ±25~76μm※
建造物や地形測定
屋外での検査なら
HEXAGON

Absolute Tracker AT960

HEXAGON公式HP
画像引用元:HEXAGON公式HP(https://hexagon.com/ja/products/leica-absolute-tracker-at960)
強力な防塵・防水仕様で屋外環境でも正確な測定

密閉型ユニットが粉じんなどの汚れの侵入を防ぎ(IP54相当)、屋外環境でも問題なく使用できる測定機
本体搭載の環境ユニットが気温、気圧、湿度条件をチェックし、外部要因に合わせて検査結果を補正します。

測定範囲 ~80m(最大160m)
指示誤差 ±15μm +6μm/1m※
(※参考:[PDF]キーエンス公式HP https://www.keyence.co.jp/download/download/confirmation/?dlAssetId=AS_107457&dlSeriesId=WS_SR57355&ad_local=CDc&wl=1
(※参考:FARO公式HP https://www.faro.com/ja-JP/Products/Hardware/Quantum-FaroArms
Euni 測定値と公称値を比較した2点間の距離誤差)
(※参考:東京貿易テクノシステム公式HP https://www.tbts.co.jp/product/3d-measuring/laser-tracker/leica-at960/
Uxyz 最大許容誤差として明記し、ASME B89.4.19-2006 & draft ISO 10360-10 に従い算出、指示がない限り精密ライカ1.5’’レッドリングリフレクタを使用)